DX(デジタルトランスフォーメーション)の要諦
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完成には相当な期間を要すると考え、執筆段階で公開させていただきます。
概観
デジタルトランスフォーメーションという言葉が頻繁に聞かれるようになった。基本的には、デジタル技術によって生活様式が変化すること、であると考えている。当然、企業はwebページから顧客情報を抽出・管理することで、適切なタイミングで営業をかけられる仕組みを自動化する、といったこともDX事例である。ただ、私は、小学校の授業が全て映像授業となり、教科書やノートがクラウドストレージに保管され、手ぶらで小学生が登下校するようになれば、これもDX事例であると考えている。例えば、経済活動は、生産者(事業者)と消費者(生活者)の両主体によって成立するものであると考えるならば、その両面で考察しなければならないと考えている。
DT(Digital Technology)
DTの定義
アナログ情報をデジタル情報へと変換する技術
デジタル技術の定義は基本的にこうなる。多くのメディアでは、デジタル情報の特徴をデジタル技術の定義とされるが厳密にはこうだろう。
では、デジタル情報とは何か、となるのだが、技術の運用者は細かく理解する必要はない。
一定の尺度で分離可能な標準規格
この程度に理解すれば良い。
一定の尺度とは、デジタル情報は基本的に既に決められたモノにしかならない。例えば、音楽は顕著である。いわゆる生演奏とデジタルの音色はどこ違うのか。それは、音をABCDEのような階層に分け、それを録音したのがCDである。そして、この階層が多ければ多いほど、高音質となる。ただ、一方で、基本的には、デジタル情報で再現可能な以上の音が発生しているため、より音楽を楽しみたい人にとっては、生演奏に価値があるのである。
分離可能とは、情報だけを抜き取ることが可能である。情報は基本的にコンテンツとメディアの2要素によって構成される。例えば、新聞は顕著である。最近の新聞は従来の新聞と電子版の新聞と2種類で発行されるものがある。この場合、コンテンツは文字、メディアは紙またはweb、とで分けることができる。新聞では印刷された文字でも写真でもメディアから持ち出そうとすれば、書き出す(アナログ)か、写真で撮る(デジタル化)か、が一般的だろう。それが好まれない結果、分離せずスクラップするのだろう。このように、メディアとコンテンツが切り離しにくいことが分かる。一方で、電子版であれば切り離すことは容易である。文字をコピペすることも、写真やグラフだけをダウンロードすることも容易である。
標準規格とは、デジタル情報はデジタルで繋がっている、ということだ。デジタルの世界とアナログの世界は確実に隔たりがあるが、デジタルの世界は標準化され繋がっているということだ。
象徴するキーワード
我々が売っている商品はゲームのアイテムも、アバターの洋服も、畑も、家も、原価はタダ。
疑似体験を売っていて、実物を売っているわけじゃないからね。
だから、1度開発してしまえば商品は無限にあるわけだから、
売り切れて儲けを逃すなんてこともないし、
失敗しても在庫を抱えて大損なんてこともない。
そもそも何もないんだから。
DXの前にデジタル・イノベーションを考えるならば、この言葉に対する検討は絶対的に必要である。この言葉は、ソーシャルゲーム(概ね基本料金無料のスマホゲーム)会社の社長のテレビドラマ内でのセリフである。テレビドラマのセリフということもあってか、やや誇張的な表現であり全てが正確とは言えない。しかし、概ね正確といえば正確である。つまり、どういうことか、回答することがデジタルに対する素養を付ける第一歩であると考えている。
DTの特徴
再編集性
デジタル技術による財は、後から再編集が可能である。例えば、近年のゲームは発売後にデータを配信し、データを更新することでアップデートされていく。一度生産しても後から書き換えることが可能である。
均質化
複製コストが概ね無料
一般的な物財(非デジタル財)を生産する場合、1単位あたりの再生産費用(限界費用)は通常通り発生する。一方で、デジタル財を生産する場合、費用はほとんど発生しない。言い換えれば、デジタル財における変動費は(概ね)ゼロである。
デジタル財の費用構造について基本的な考え方は、初期費用が高く、再生産費用がゼロ、というものである。莫大な費用を投じでデジタル財を開発し、大量に販売することで回収していく流れである。限界費用がゼロで、店舗等が必要ないデジタル財の利益率は極めて高い。また、機会損失もない。
情報
変動費がゼロで固定費のみが発生する場合、固定費さえ回収できれば、商品やサービスの提供は無料でも良くなる。例えば、広告で固定費を回収し、課金コンテンツで稼いでいくモデルである。
距離
非デジタル財の流通が物流を通じて行われるのに対して、デジタル財の流通は通信を通じて行われる。物流であれば、一定面積あたりの需要に応じて配送センターを設置するなど、配送上のコストが発生する。しかし、通信であれば、通信速度の問題はあれど、数分程度であらゆる流通が世界規模で完結する。こうした特徴は、商圏/経済のグローバル化、を意味する。
自己参照性
準備中
DTの戦略
デジタル技術を活用する戦略を考える上で注目したいのが、アーキテクチャ(設計思想)である。
モジュール・アーキテクチャ
一つは、モジュール・アーキテクチャとインテグラル・アーキテクチャの区分である。
インテグラル・アーキテクチャとは、個々の部品を最終製品を構成する部品群全体と最適化し、それらを組み合わせることで最終製品を作ることである。これに対してモジュール・アーキテクチャとは、最終製品を構成する様々な商品群をいくつかの部品に分ける。
特にデジタル財の場合は、モジュールが階層化されており、これを特にレイヤード・モジュール・アーキテクチャと言う。例えば、スマートフォン/パソコン(電子機器)・Android/iOS/MacOS/Windows(OS)・ワード/エクセル/ パワーポイント(ソフトウェア)、と言うように積み上がるような構造である。
オープン・アーキテクチャ
もう一つは、オープン・アーキテクチャ・クローズド・アーキテクチャの区分である。オープン・アーキテクチャとは、異なる最終製品間の部品を共有できるよう、部品のインターフェイス(USB/APIなど)を標準化する設計仕様である。これに対してクローズド・アーキテクチャーとは、一つ一つの最終部品ごとに、専用部品が作られるという設計仕様であり、各部品はそれに対応する最終部品に最適化されて設計されている。
オープン × モジュールの特徴
個々のモジュールについて多様な製品群が準備されていれば、結果として、様々なモジュールを組み合わせることで異なる最終製品を作り出すことができる点である。モジュール化された製品の場合、それぞれのモジュールの多様性は、最終的な製品の多様性を指数的に増大させる。しかも、インターフェイスが業界で標準化され異なる企業にもオープンにされていれば、それぞれのモジュール製品のを作る企業がたくさん現れ、その中での競争によって価格が低下し、品質が向上するだろう。他方、最終製品を作る側にも、様々なモジュール部品を組み合わせ、それに自らのデザインや付加価値を付け加えることによって、競争が激化する。このようにオープン・スタンダードの下で作られるモジュール・アーキテクチャには、 少なくとも次のような利点がある。
- モジュール群の中から最適な選択をすることができる
- モジュールを組み合わせれば良いのでコストの削減が可能
- 品質管理をモジュール単位で行うことができる
- 部分的(モジュール単位)での修理・交換等が可能
- モジュールの組み合わせによって製品機能を拡張できる
- イノベーションの潜在的な可能性
- 類似モジュールでの競争によって品質向上が期待できる
- 同一モジュール単位での市場形成
グローバルな水平分業
一つは、グローバルな水平分業、を可能にしていることである。モジュール単位での開発をするため、あるモジュールを担当する個人や企業は全体の設計等を気にせずに開発に専念することができる。そして、中心となる製品とのモジュールによる統合部分であるインターフェイスの公開範囲を管理することで、品質管理を行っていく。
インターフェースが独自仕様でクローズである場合は、インターフェースを共有している個人や企業の間でしか行えない。インターフェイスを共有する相手を限定することで、優位性を獲得していくことになる。一方で、インターフェースがオープンである場合、世界中の個人や企業が自由に開発を行うことが可能である。
最適化の程度
もう一つは、最適化の程度、である。モジュール化を想定する場合、主要財はモジュールによる結合を前提とするため、オーバースペックである必要がある。主要財には一定の余裕が必要である。モジュール化による水平分業は、将来的な機能拡張を前提とした設計仕様であり、そういう意味で最適化は行われない。
このテーマにおいては有名な事例であるが、スマートフォンをOSで比較すると分かりやすい。iOS(垂直統合/最適化)とAndroid(水平分業/非最適化)の比較である。単純に、長持ちする端末はどちらか、という問である。iOSの場合、OSと端末を設計する会社が同じなので最適化がされている。つまり、OSがアップデートされても、OSの対応する端末をOSの開発側が熟知しているので最適化が可能である。一方で、Androidの場合は、OSと端末がモジュールで切り離されているので、高価格の端末でなければ、アップデートされるOSのバージョンに対応できず、動作が重くなる。
オープン × モジュールの戦略
この「オープン×モデュール」という特徴は、デジタル戦略の基盤を担っている。この特徴を基軸として生まれた戦略が以下の通りである。今となっては当たり前になっているが、確かに、デジタルの特徴を抑えれば当然の戦略である。日本企業もITという名の下に、デジタル×インターネット、をキーワードにデジタル活用をしてきたが、こうした特徴を抑えているのかは不明だ。少なくとも、海外のようなデジタル企業の誕生は極めて少ない。
マルチサイド・プラットフォーム
準備中
オープン・イノベーション
準備中
DTの考察
デジタルの基本的な特徴を列挙し、デジタルの特徴を示すとともに、戦略について提示した。確かにデジタル技術の特徴について理解していれば、当たり前の戦略であるように思える。しかし、日本ではITという名の下にデジタル技術の活用範囲を限定してきた経緯がある。これが、海外企業と比較して日本企業で、デジタルが浸透しない、一番の要因であろう。さらには、非デジタル技術で経済大国となった日本が、デジタル技術が経営戦略上、重要であるからといって簡単に移行できるわけではない。
DXの定義の基本的な方向性は、全社的なデジタル技術の浸透、である。定義主体によって、多少の相違はあるだろうが大きくは変わらない。日本の場合は、デジタル技術の理解・デジタル化・デジタルとアナログの棲み分け、といったようなステップを一から行わなければならず、非常に道のりが長い。結果、局所的なITインフラの導入に終始し、外国企業との差は広がるばかりである。DXの必要性の有無も含めて今後の動向は興味深い。
参考情報
論文
- Yoo, Y. Henfridsson, O. and Lyytinen, K. ‘The New Organizing Logic of Digital Innovation: An Agenda for Information Systems Research’. Information Systems Research, 21, 724-35.
- Ulrich, K. 1995’The role of product architecture in the manufacturing firm’. Research. Policy, 24,3,419-440
書籍
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DX(Digital Transformation)
DXの定義
DXの特徴
定義
類型
DXの戦略
C
C
D
I
V
まとめ
DXはともかく、デジタル技術自体の生活への浸透はIT化の名の下に達成されたといってよいだろう。日本は特に通信回線のインフラ・PCやスマートフォンなどのデジタル・デバイスの普及率が高い。しかし、企業活動においては、その活用は限定的で専門の部門が管理し、その他の部門では理解度が低いという事例は少なくない。結果、デジタル技術や関連機器の普及などハード面ではDXが既に達成される土壌があるにも関わらず、人の意識が追いつかずソフト面でDXの足を引っ張っているケースは少なくない。真似事ではなく、個別企業が自社の価値を再認識し、DXを推進していく(場合によっては従来を維持)していけば、より良い方向へと向かっていくだろう。
参考情報(リンク)
論文
書籍
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